世界観に浸る没入感が食事の価値を変える!「没入感のある食事体験」とは!?

食べることへの関心が低い若者が増加する一方、食べることへの支出を厭(いと)わない若者も増加しています。

ただし、以前とは違って、「量が多ければいい」「映えればいい」という時代ではなくなってきています。
食事と同じくらい、参加型のイベントや推し活に多くの費用をかける若者たち。

彼らが新たに注目する食事の価値のひとつに、「没入感のある食事体験」があります。

「没入感」とは

没入感」とは、他のことが気にならなくなるくらい、ある対象や状況に意識を集中している感覚のことです。音楽やゲーム、バーチャルリアリティー(VR)などの、マルチメディアにおける体験を指すことが多くなります。

最近では、演劇やアトラクションなどでも「没入」をテーマにした施設やイベントが増えています。

2000年代にロンドンの劇場から始まった「体験型演劇作品」。日本でもその作品の世界観に入り込んだような体験ができる「リアル謎解きイベント」が、若者を中心に人気を集めています。

「没入感のある食事体験」とは

「没入感のある食事体験」とは、食事を媒介として、それぞれの世界観にどっぷりとはまることです。

料理の内容だったり、味わう環境だったり。創造されたシチュエーションであっても、消費者自身が納得することで、高い満足感を得てもらうことが可能です。

コロナ渦における外出規制などが解除された反動によって、さまざまな体験に価値を見出す人が増えました。

そんな中、外食産業などにおける新たな価値の創造を期待できるものとして、「没入感のある食事体験」に注目が集まっています

没入感のある食事体験をできる場所とは

モノよりもコト消費を好むミレニアル世代にとっては、没入感を得られる食事体験が価値あるものとされています。それに伴って、日本だけではなく世界中で、没入感のある食事体験を叶えられる場所が増えてきています。

「イマーシブ・フォート東京」

東京・お台場にあった「ヴィーナスフォート」を活用した施設。11種類ものイマーシブ(完全没入)体験を楽しめるテーマパークでは、4種類の没入感のある食事体験を味わえます。

キャバレーのショーを見ながら食事できるレストラン、人気漫画の世界観を体験できる喫茶店、初めてでも常連扱いしてもらえるイタリアンレストラン。そして、洗練されたブティックのようなデザート専門店。

そのときの気分や用途で使い分けられ、そのすべてがSNS映えを意識していることも、人気の要因のひとつです。

【没入体験】施設の「イマーシブ東京」 3月1日開業 – Youtube

機内食

機内食のイメージ

飛行機の機内という非日常的な空間のなかで、食事ができる機内食。それだけでも、体験に価値を見出せます。しかし、最近では、日常以上のこだわりを持った美食に没頭できる機内食を提供する航空会社が増えてきています。

地域でとれた新鮮な食材を使った料理を提供するシンガポール航空、機内食調理過程で出た食品残渣を加工した堆肥を使って育てられた野菜を提供するANA。

世界中の航空会社が、機内食を没入感のある食事体験に変化させています。

没入感のある食事体験をつくるためには

「没入感のある食事体験」をしてもらうことは、難しそうに感じられるかもしれません。しかし、少しの工夫を施すことで、お客様に没頭していただける食事体験の価値を作り出すことができます。

コンセプト・店舗作り

没入感の価値を得られる食事体験を作るためには、コンセプト作りが重要になってきます。さらに、そのコンセプトに沿った店舗づくりも必要です。

たとえば、最近人気のおにぎり専門店の場合。ナチュラルな素材の食品容器に入れたおにぎりを、デイキャンプ気分で食べられるようにします。店内にタープやテーブル、キャンピングチェアなどを設置することがおすすめです。

ステレオタイプなシチュエーションを極めた環境を提供することで、お客さまに価値観を感じてもらうことが可能になります。

スタッフの意識改革

メイドカフェや執事喫茶などで、お客様は演出された店舗の内装によって没入感を感じられます。しかしそれ以上に、キャラクターを演じるスタッフに対して、お客様は没入感の価値を得ています。

たとえば、インド料理店の場合。サリーを着たスタッフが、入店したお客様に向かって、胸の前で両手を合わせ「ナマスカール」とあいさつをします。その後も、インド人を演じていきます。

お客様を没頭させたいと思い、キャラクターを真剣に演じます。違和感があったとしても、堂々と演じていれば、それを独自の世界観に変化させられます。そして、没入感のある食事体験を作り出すことができるのです。

まとめ

2000年頃にメイド喫茶が登場した際。ニッチなターゲットを狙った商法として話題になっても、それを大きな商機としてとらえる人は少なかったものです。

それが現在では、日本を代表するような文化となり、没入感という価値を得られる場所となっています。没入感を得られる食事体験を作り出すことは、特に難しいことではありません。莫大な費用をかけずとも、備品や食品容器を変えてみる。それだけでも、大きな利益を得られるチャンスを造り出せるのです。

この記事を書いた人

チェーンストリーム株式会社 編集部ご覧いただいた担当者さまの新しい気づきや行動につなげられるような記事を執筆しています。編集部には、商品企画、マーケティング、EC事業部、CFP保持者などのメンバーも携わっています。

■参考資料

若年・中年層を中心に「食べること」への関心が低下~20代の約3人に1人が朝食を食べない~ <令和元年7月消費者動向調査>- 日本政策金融公庫
第2章 第2節 (1)若者の消費行動 | 消費者庁 (caa.go.jp)